飲食店を開業しようとするとき、欠かすことが出来ないのが営業許可書です。営業許可書を交付してもらうためには、営業許可申請を地域の保健所に対して行います。すると保健所は完成したお店に立ち入り検査を行い、この立ち入り検査で問題が無ければ営業許可書が交付される仕組みになっています。

この営業許可申請は初めてのお店を開業するときだけではなく、2号店、3号店と出店する際にも毎回必要となるばかりか、お店の移転、改装をした場合にも検査を受けて再び営業許可書の交付を受ける必要があります。

さて、そこで気になるのが保健所の立ち入り調査時にはどのようなポイントを確認するのかということです。そこで、今回は保健所の検査をクリアするための店造りのポイントについてお話してみたいと思います。

飲食店には施設基準というものがあります

保健所の立ち入り調査時のチェック基準は施設基準に則って行われます。飲食店を行う場合、飲食物を扱う店としての「共通基準」というものと、その業種ごとに定められている「特定基準」という2つのルールがあり、これらを総称して「施設基準」と言います。共通基準は自動販売機での食品販売を除く、全ての飲食物を扱う業種に共通で定められているもので飲食店においては主に厨房部分の基準とも言えます。特定基準は「飲食店営業」「喫茶店営業」、その他食品の製造業種ごとにその特徴に応じた追加的基準が定められています。
それでは、飲食店のチェック基準について、以下で説明します。

「構造」「設備」「給水及び汚物処理」の3つの視点で17項目がチェックされます

清潔で頑丈な建物であること
チェックの最初はお店に入ってくる以前に始まっています。飲食店を行うのですから「お店のある場所の周囲環境が清潔であるかどうか」「お店が入る建物は十分な耐久性があるか」を見ています。
これらは非常にあたりまえのことですが、近隣に不衛生な状態の場所があったり、建物の老朽化が激しいなどで危険が認められる場合には、営業許可が出ない可能性があります。場所については、事前相談時に確認することもできます。

区画されていること
営業施設内(店内)は使用目的ごとに壁やボードなどで区画されていなければなりません。飲食店の場合には「厨房(調理場)」のように調理をする目的の場所と「客席、更衣室、事務所、トイレなど」の調理をしない別の目的のための場所とは区画されている必要があります。また、区画されていると判定されるためには出入口に扉が設置されている必要があります。
また、区画ごとの広さ(面積)についても適切な広さである必要があります。厨房の場合には食品の取り扱い量に応じた適切な広さが求められます。営業許可をとるために要件だけを整えたミニマムな厨房で、実際には狭過ぎて別の区画や屋外などで作業をしているなんてことがあってはいけないということです。

掃除しやすい構造になっていること
使用目的に応じて区画ごとに清掃しやすい構造にする必要があります。特に厨房(調理場)については、衛生を保つためには毎日の清掃が欠かせない場所です。不衛生にもなりやすい場所であることから、より具体的に仕様が定められています。床は耐水性の材質で水はけがよういこと(タイル貼りやコンクリートなど)、壁は床から1メートルを超える高さまで耐水性の材料で仕上がっていること天井は天井板が貼ってあり塗装や耐水性クロスなどで仕上げられていることが求められます。その他の区画でも営業施設内(店内)については、清掃しやすい、衛生管理がしやすい構造や素材になっていることが求められています。

照明設備があること
真っ暗なお店は営業上ありえないことですが、厨房区画は最低でも50ルクス以上、客席ついても最低10ルクス以上が必要です。
因みに、50ルクスとは住宅街の街灯が同じ程度の明るさとなっています。また、10ルクスは客席の周囲が最低限度見渡せ、安全に移動できる明るさと言うことになります。

換気扇があること
厨房(調理場)部分は、ばい煙(調理で発生する煤や煙)や蒸気(湯気)等の排煙設備(換気扇等)が設置されている必要があります。また、換気扇フードを設置する場合には、天井との隙間が無いように直付けする必要があり、フードの外周は垂直になっている必要があります。これはフードの上部や外周部に埃や汚れが堆積しないためです。
また、客席や客室、トイレなどには、区画ごとにそれぞれ換気設備を設けなくてはなりません。

周囲の地面が舗装されていること
お店の周囲の地面(お店の全て出入口のある地面)については、舗装されていて水はけが良く清掃し易い状態になっている必要があります。出入口の周囲の衛生が保たれないと店内を清潔に保てないということ、さらに店の周囲が不衛生にならないようにすることを目的としています。

ネズミ類や昆虫のなどの防除対策がされていること
窓には網戸、排水溝には鉄格子や金網などを取付け、外部からのネズミ類や昆虫などの侵入を防ぐ仕様になっている必要があります。区画を貫通している部分などは隙間を埋めるなどの対策も必要となり、検査でも細かくチェックされる部分です。

シンクがあること
原材料、食品や器具等を洗浄するための流水式の洗浄設備(シンク)があること、また飲食店ではシンクが2槽以上あることが求められています。1つの洗浄槽の大きさは、45cm(幅)×36cm(奥行)×18cm(深さ)以上である必要があります。

手洗器があること
厨房内(従業員用)と客席内(客用)にそれぞれ手洗器が設置されていて、それぞれに消毒装置が固定で設置されている必要があります。
消毒装置とは、消毒液等(ハンドソープや消毒用アルコールなど)の入った容器が手洗器または手洗器の周囲に手洗い時に使用できるように固定設置されていれば良いとされています。
手洗器の大きさは、36cm(幅)×28cm(奥行)以上で厨房用の物の蛇口は足踏み式またはハンドコック等が望ましいとされています。

更衣室があること
厨房内では専用の衣服(調理着)、履物、帽子を着用させるために清潔な更衣室又は更衣箱を厨房外に設けられていることが必要です。

厨房設備が設置されていること
あたりまえのことかもしれませんが、そのお店で取り扱う量に応じた厨房器具や容器、包装を備え、移動し難い機械器具等は作業に便利で清掃及び洗浄がしやすい位置に配置しなければなりません。また、器具等の材質は熱湯、蒸気又は殺菌剤等で洗浄可能な材質であることが求められます。
また、原材料や食品、器具などを衛生的に保管できる設備が必要となります。
更に、冷蔵、殺菌、加熱、圧搾等の設備には、見やすい箇所に温度計や圧力計を備えることとなっています。
特に保健所の検査でチェックされる部分としては、食器棚に扉が付いているかを確認されます。飲食店の場合、材料保管庫には冷凍庫、冷蔵庫も含めて扉が付いていますが、食器棚は頻繁に営業中は食器を出し入れすることから扉が無くても良さそうに思いますが、保健所では扉が無いと検査に合格することができません。

飲用可能な水が豊富にあること
一般的には水道水が引き込まれて使用可能になっていることです。
但し、公共水道が整備されていない地域などについては、地下水や貯水槽の水をろ過殺菌するための設備を設けたうえで、飲用レベルである証明として水質検査成績書を保健所に提出する必要があります。

トイレがあること
客用トイレと従業員用トイレの兼用は可能ですが、大型飲食店のように従業員数が多い場合には、従業員専用のトイレが必要となります。
また、トイレは厨房から離れた位置で食品等の取扱いに影響を与えない場所にあることが求められます。
更に、トイレには手洗器の設置と固定式の消毒装置を必ず設置しなければなりません。

蓋つきのゴミ箱が設置されていること
厨房内には蓋つきで耐水性のゴミ箱が設置されていなければなりません。また、扱う食品の量に見合った十分な容量があり、清掃し易く、汚液や悪臭が漏れ出さないものである必要があります。

厨房専用の掃除用具と用具入れがあること
厨房内専用の掃除用具を準備し、専用の用具入れが必要となります。外用の掃除用具を厨房内の清掃では使用できません。衛生面や感染対策からも、清掃用具は必ず分けるようにする必要があります。

冷蔵庫があること
冷蔵設備を設ける必要があります。また、その冷蔵設備には適正な温度管理をするために庫内温度を測るための温度計を設置しなければなりません。

お湯が出ること
飲食店では、洗浄および消毒のための給湯設備が必要です。検査の際には実際にお湯が出ること(給湯器が作動しお湯が蛇口から出ること)が確認されます。

無許可営業はには重い罰則があります

とても面倒なように感じる営業許可申請と立ち入り検査ですが、無許可で営業した場合には、食品衛生法違反となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられることになってしまいます。無許可での営業は、通告や保健所職員の抜き打ち調査時に発覚するだけでなく、私服警官なども風営法の観点から飲食店が基準通りに営業しているかなどの確認に巡回していたりもします。つまり、登録に無いお店を見つけたら確実に立ち寄るということです。どんなに小さなお店でも、飲食店として営業を始めたら、無許可はばれると考えるべきです。

地域によって若干ルールが異なる場合があります

保健所の基準は全国共通のように思われますが、大筋では上に書いた内容とな時なのですが、若干地域によって法文の解釈が異なることからルールが若干異なる場合があります。
例えば、手洗器については、東京都では従業員用として厨房内に1つ、お客様用としてトイレ区画に1つあれば問題ありませんが、横浜市ではトイレ以外に客席部分にも1つ設置する必要があります。
また、お店の明るさの規定についても、地域によって明るさの規定が異なる場合や、厨房とトイレの配置なども細かく指導される地域などもあります。

これらの違いは、工事に入る前に保健所へ事前相談に出向いて確認しておく必要があります。事前相談なしに工事を終えてオープン間近に保健所の検査を受けて、その場で問題点を指摘されてしまうと、それを改善するまで営業許可書は交付してくれません。また、一度出来上がった内装を取り壊して改造する必要すら出てくる可能性もあることから、無駄な追加工事費用が発生するというような事態にもなりかねません。

居抜き物件でも注意が必要です

居抜き物件だからといって営業許可申請をしないというわけにはいきません。また、以前に営業許可が下りて営業していた物件であっても、営業期間中に小改修などを行い申請していないケースなどもあります。そうした場合、新たなオーナーが営業許可申請を行って保健所の立ち入り検査時に問題を指摘されて改善するように指導される恐れもあります。ですから、居抜き店舗で開業する場合でも、保健所への事前相談やチェック項目を十分に確認して準備をしておく必要があります。

MORIWORKS CO.,LDT

当社では、このようなトラブルを未然に防ぎ、無駄なコストを負担することがないよう、事前協議や確認を行ったうえで店舗プランを確定し、工事を開始するようにマネジメントしています。上で書いたようなことを未然に防ぐことで無駄なコスト負担を無くすことは、結果としてコストダウンにもつながります。
また、申請書類の作成や申請代行を行政書士事務所などで請け負っていますが、建築や内装の知識が乏しいことで、本来は仕様通りに仕上がっていたにも関わらず、無駄な工事を行政書士の言うとおりにしてさせられてしまっていると言ったケースも見受けられます。図面作成から事前相談は当社でも行うことができます。また申請書の作成は当社がアドバイスして書いて頂くこともできます。更に、保健所への申請はご自身で保健所に出向くだけのことです。不安であれば、当社で同行するなどのサポートもしています。こういった部分でもある意味無駄なコストは省くことができます。

是非、お気軽に当社までご相談ください。