店を始める準備で必ず行うことになるのが内装工事です。最近では、居抜き物件を活用することで、工事費用を大幅に圧縮できるようになったことから出店のチャンスが広がりましたが、工事費用を圧縮できるつもりで買った内装設備が、実は一度取り壊して造り直さないと開業することができないというようなケースもあります。そこで、ここでは内装工事にはどんなものがあって、何に費用が掛かるのかを含めて、店主が最低限知っておいた方が良い内装工事の基礎知識をまとめてみたいと思います。

店をつくるときの工事は、おおまかに以下の5つに分類することができます。
1. プランニング(設計・デザイン)
2. 造作工事
3. 設備工事
4. 仕上工事
5. 家具什器工事
6. 外装工事(ファサード、看板)

1.プランニング(設計・デザイン)
店舗内装のプランニングは、店つくりの基本となる部分ですので非常に重要となります。ここで充分な検討やプランニングをしていないと、後の施工段階で問題が起きたり、仕上がりがイメージと異なるなどのトラブルが発生してしまいます。また、不特定多数の人が利用する店舗は法的な制約を受けますので、適法にお店をつくる必要があり、それに対して監督官庁の検査も受ける必要があります。そう言った面倒な問題もきちんと考慮したプランニングをしてくれるのが設計士やデザイナーの仕事でもあります。
お店の設計デザインと言うと見た目は重要ですが、適法であることも重要なポイントとなるので、プランニングは専門家を使ってきちんと行う必要があるわけです。また、設計士やデザイナーは、それぞれに得意分野を持っています。お店の業種業態、規模、建物の種類、工事の難易度などによって適切な人選が必要となります。更に、設計士やデザイナーは施工段階では工事の進行状況や工法の確認、施工会社への細かな部分の指示出しなど、施工の監理を行ってくれます。施工側にも現場ディレクターである現場監督がつきますが、こちらは主に工事の現場管理が中心です。つまり、設計デザイナーは、施主側に立って工事を監理してくれる役割も担っていますので、設計施工の一体請負は工事をチェックする機能が一つ無くなってしまうという面であまりオススメできませんし、施主のリスクヘッジが出来なくなることになります。
費用的には、総工事費用の10%程度です。しかし、建物の改修が必要だったり、建物の用途変更が必要になったりする場合には、別途追加費用が必要ですので、できれば物件を契約する前にプロの目で一緒に確認に同行してもらうと物件選びの失敗を無くすことが出来ます。

2.造作工事
造作工事は、壁や間仕切り、天井などを造る工事のことを言います。既に居抜き店舗で出来上がっている場合には、造作工事は殆ど発生しませんが、スケルトンからの工事の場合でコストを下げるには、この造作量を少なくすることでコストダウンすることができます。その最も解り易い例が、躯体が見えたむき出しのままの状態になっているお店があると思いますが、このような躯体現しの状態は造作が無いのでコストが抑えられているということです。トイレや厨房、製造所などは保健所が定める基準で造作が必要となるので、この部分は基準に従って造作せざるを得ません。しかし、この部分も工夫によりコストを下げた造作は充分に可能です。

3.設備工事
設備工事には、電気、ガス、空調換気、衛生給排水、厨房などの工事があります。飲食系のお店以外は厨房工事が有りませんが、飲食系の場合に最も費用が掛かるのが厨房設備工事で工事費用全体の3割から5割程度を占めます。
厨房設備工事以外の設備工事はどの店舗でも必ず必要となる工事ですが、物販店などの場合には、トイレやバックルームが既に分けて造ってある物件に入ることで、先の造作工事含めて設備工事を圧縮することが出来ます。また、トイレが既に既設であるか、又は、男女別に2つ欲しいなどによって費用がかなり動いてくる部分ではあります。
厨房設備工事には、防水工事と床下に埋設する給排水やガス管などの工事が複合的に入ってきます。厨房工事が高額なのは、この防水槽を形成し水漏れしないようにすることと、床下配管が必要になるからです。居抜き物件で防水切れを起こしている物件は、根本的に改善するためには厨房の全解体で新たに造り直すしか方法はありません。そうなると、床上の厨房機器を一旦撤去して床下配管も全てやり直すことになるため、ゼロから造るよりもコストが掛かってしまうわけです。

4.仕上工事
仕上工事は、色を塗ったり、壁紙や床材を貼ったりという工事のことを言います。仕上工事は、使う材料によって値段にブレが大きく生じます。床をリアルウッドでフローリングしたいという話が多くありますが、コストを下げるのであれば、床材をビニールタイルのフェイクのフローリングにするだけで、コストは半分以下で出来る場合もあります。また、上で紹介した造作部分を少なくすることで、仕上をする場所の量を少なくすることが出来ます。
更に、壁紙(クロス)貼りをする職人、床を貼る職人、塗装をする職人は、それぞれ異なりますので、仕上げの材料を統一すること、つまり職人の種類を減らすことでもコストダウンすることができます。
小さなお店の場合には、仕上工事は自分で教えて貰いながら行うとか、手伝うことで若干の手間賃程度ですが、コストを下げるということも可能です。こういう場合には多能工という、いろいろな作業を1人で出来る人をアテンドしたりします。当然、専門の職人よりも単価は若干高いですが、教えて貰いながら一緒に作業をすることができます。多能工は年配のベテラン職人に多いので、その他にも自分で作業をしたい時には教えて貰えたりもします。但し、時間的余裕がない時には、専門の職工にお願いした方が圧倒的に早く綺麗に仕上がります。これがお金で時間を買うということです。

5.家具什器工事
飲食店の大型のカウンターなどは造作工事で造りますが、物販店のレジ台や小さなカウンター台、飲食店のベンチシートなどは置き家具として店舗用の専門家具工場で製作して搬入設置します。また、商品陳列棚やショーケース、椅子、テーブル、ソファーなどの搬入組立設置までが工事に含まれます。
この辺りの物は、お店の内部イメージに大きく関わってきますが、施主自身で中古品を探したり、安い家具店などで買い揃えるなどでコストを下げることが出来ます。一般家具店やIKEAなどの組立家具などは、大工さんにお願いして組み立てて貰うことも出来ますが、一般家具店等の組み立て設置サービスなどがある場合には、それを利用した方が安く上がることもあります。尚、一般の組立家具は、一度組立したものを解体すると再組立てが出来ないものもありますので、一般家具店の組立家具の中古品は避けるようにした方が良いです。

6.外装工事(ファサード、看板)
店舗内装工事と言いながらも、実は外装工事もあります。それが、店構えの装飾(ファサード)や看板(サイン)などの工事です。
ファサード工事は、スケルトン物件の場合にはシャッターを開けたらサッシが付いていないという物件があります。そういった時には、全面サッシにするのか、壁を造って扉や窓を付けるかなど、お店の外から見た印象を大きく左右する工事となります。これには割と大きな金額が必要になる工事ですのでファサードの無い物件に出店する場合には注意が必要です。
更に、看板は既存で付いている場合もありますが、スケルトンの場合には新規で取り付けるケースが殆どです。サインのデザインや種類、掲示の方法によってもお店のイメージが大きく変わり、売上にも大きな影響を与えますので十分なプランニングが必要となります。また、大型建物の壁面などに取り付ける場合には、既に付いている他店の看板との問題で大きさが法的に制限される場合や既に大きな看板が付いている場合には新たな取付が出来ないこともあります。また、地域によっては看板や文字、デザインの色や大きさに制限がある地区などもありますので、お店を借りる前にそのあたりの確認も必要となります。

MORIWORKS CO.,LDT

こうして1つ1つの工種を見て行くと、冒頭でプランニングが重要だと書いたことがご理解頂けると思います。どんなお店をつくるにしても、また居抜きを活用する場合でも、法的な制約やコストを低く抑えるための店造りのアイデアや方法などを最初の段階で充分に練っておくことで、結果として低コストで納得できる店を作ることができるのです。お店をイメージするときにも、こういったことを知ったうえでお店をイメージして頂ければ、スムーズにお店をプランニングすることも出来る筈です。

当社では、最初のご相談段階でご依頼者様のご要望やイメージされている内容を十分にヒアリングしたうえで、ご予算に合ったイメージ通りの物が実現できるかどうかの可否判断から、ご予算内で抑えるための代案の提案を専門の建築士やデザイナーをキャスティングしてご提案いたします。また、施工に関しても充分なプランニングを行ったうえで最適な施工業者を選定し、無駄なコストを省く適切なキャスティングと無駄のない施工を行わせることでコストダウンも実現できるわけです。

是非、お気軽にご相談ください。