店舗の新規出店や工事を行う場合には、消防法で定める消防署への届出が工事の有無に関わらず必要となります。また、工事を行う場合には消防法のみならず建築基準法に則った工事を行う必要があり、所轄の消防署や場合によっては役所の建築指導課に対して工事内容の相談や確認を行い、届出をしてから着工することになります。工事を終えたらお店の営業を開始する前に所轄の消防署の検査を受けてから営業を開始することになります。

「工事をしないから消防は関係ない」は間違い

多くの方が工事するから消防への届出と消防検査は仕方なくするけれど、工事をしなければ消防への届出の必要はないと思っていらっしゃる方が多いようです。こういう話は特に居抜き店舗を使用して開業される方に多いわけですが、掃除するだけで後は看板を書きかえて開業するような場合でも、そのテナントの使用者は変わるわけですから届出は必要です。
消防署への届出をしないまま営業を開始すると、「突然の消防の査察」「ビルの消防検査」「防火対象物点検」などで問題が発覚して改善を求められるだけでなく、届出をしてない場合には、そこで届出をするように指導されます。
この指導を受けた場合には、できるだけ速やかに対応を行う必要がありますが、お店の営業を既に開始してしまっているので、なかなか準備ができなかったり、消防署に出向く時間が取れなかったりするわけです。また、後で説明しますが、届出と言っても申請書1枚で終わる話ではなく、必要な図面や書類が多岐にわたることから、この書類や図面の準備を素人では行うことができないということになるわけです。そして、ついつい日々の忙しさから届出が延び延びになったりすると、消防署から書面での催促が来ます。ここで直ぐに対応しないと、次は建物所有者に対して書面で通知、更には行政指導に至る場合もあります。
つまり、やるべきことは最初にキッチリと不安が無いように行っておくことで、後々の面倒を回避することができるということなのです。

お店を始めるとき消防に届出する主な届出書

防火対象物使用開始届出書
防火対象物工事等計画届出書
防火対象物使用開始届出書は、建物の新築・増改築・改装・用途の変更、店舗出店、事務所の入居などにより、建物又はその一部分を使用する場合、使用開始の7日前までに消防署に提出が義務付けられています。
防火対象物工事等計画届出書は、指定防火対象物(店舗や事務所などが入る建物の全て)の工事等をする場合には、着工する7日前までに消防署に提出が義務付けられています。
この2つの届出書は、基本的には記入する内容は同じで、添付を求められる書類についても同じことから、地域によっては工事計画届出書は不要で着工前に使用開始届出書だけで良い場合もあります。何れの場合でも消防検査で指摘を受けて再工事や追加工事などにならないように事前に届出て消防署と十分な打ち合わせをしておくことが重要です。
届出の際には、以下の書類も添付が求められます。
防火対象物概要表、内装仕上表、平面図、天伏図、展開図、立面図、建具表、ダクト図、電気図、厨房図、その他設備図、火を使う設備の承認図及び熱量計算書、現場地図などが代表的です。

工事整備対象設備等着工届出書
消防用設備等設置届出書
これらの届出書は、お店の工事を行う際に消防用設備の設置、追加、改変等が必要となる場合に、防災設備工事業者が作成して消防署に提出するものですが、あくまでも届出者は施主となります。また、着工届については着工の10日前まで、設置届は使用開始の7日前までに提出することが義務付けられています。
届出の際には、以下の書類も添付が求められます。
概要表、使用する機器の承認図、消防設備の設計図(平面図、天伏図)、系統図、試験結果報告書などです。

火を使用する設備等の設置(変更)届出書
厨房設備など火を使う設備を設置する場合には、この届出書を作成して消防署に提出します。この届出書も使用開始の7日前までに提出することが義務付けられています。

消防署へ届出書の提出は早めに行っておく

上記のように、どの書類も7日以上前の届出が義務付けられていますが、スケジュールギリギリの提出はあまり好ましくありません。7日前と消防署が言っている理由は、消防署側でも検討時間が欲しいこと、更には消防検査の日程調整のためです。ですから、できるだけ早めに書類は出しておくことです。
特に、工事計画届については、早目に提出・相談をしておくことで、消防側でも充分な検討ができ、必要であれば着工前の状況を確認したうえで必要な措置を指導してくれます。こうすることで漏れなく、更に完成後の追加や修正の手間を無くす協力もしてくれるわけです。

消防署への届出が義務化されている理由

消防署は届出により、防火管理対策を行うと共に火災や災害等が起きた場合には、適切な消防活動が行えるようにするために届出を義務化しています。
お店や事務所など、不特定多数の人が集まる場所は一般の家屋等と異なり、ひとたび災害が起きると多数の死傷者が出る恐れがあります。また、近隣にもその災害が広がる可能性もあることから、お店や事務所の内部がどのようになっているか、どのような設備があるか、何人くらいの人が入る場所か、救助等をどのように行えるか、救助が困難な場合にその場の人にどのように行動してもらえるかなどを検討し、準備をしておくためにあります。ですから、届出が無いということは、それらを消防署が把握することができず、火災や災害が起きた場合に適切に対応できないということにもなるわけです。自分のお店や事務所だけでなく、同じ建物内や近隣の人々にも被害を与えてしまう可能性がありますから、届出を行い消防の確認や指導等には速やかに従うべきなのです。

このように物件を確保してお店を始めようとするときには、必ず消防署への届出は行わなくてはなりません。仮に無届で営業を開始できたとしても、消防署の抜き打ち査察が入ったり、建物や設備の検査が入った際に無届であることが発覚し消防署員が確認に来るなんてことになり、届出書の提出を求められると共に、検査されることになります。こうなってから消防の指導が出て改善しなくてはならなくなった時、営業を止めて工事する必要が出てきたり、追加で費用が掛かってしまったりすることもあります。また、指導に従わない場合には、建物の所有者にまで通知が行ってしまったり、最悪では使用停止、つまり営業停止の行政処分が下って、改善が完了されるまで営業できないという事態になる可能性もあります。つまり、届出をしないのは、単なるちょっとした費用や手間の先送りどころでは済まなくなってしまいます。

MORIWORKS CO.,LDT

当社では、無届で営業を開始するのは絶対にお勧めしません。それは、先に書いたように、無届だったために消防署の指導を受け、何とかして欲しいという何件ものご相談があったからです。中にはお店のかなりの範囲を解体するような工事になってしまったケースもあります。最初に一気にやっておけば、ここまでコストが掛かることは無かっただろうということも少なくありません。また、指導に従って工事をやっていたら、とんでもない欠陥工事だったりすることもあります。こうなってしまっては、話は消防だけの問題ではなくなってしまいます。

当社は、ご相談を頂いて最初の段階から、専門の建築士や防災設備士を入れて確認作業を行います。営業開始されてから後々に問題が起きないように十分な検討を行ったうえで施工等も行います。見かけの安さに騙されることなく、基準通りに工事を行い、届出も確実に行うということを前提にコストセーブが如何にできるかというトータルなご提案を行っています。

また、消防の指導を受けてしまい対応に困っているなどのご相談も随時受付けています。

先ずは、お気軽にご相談ください。