居抜きを活用して開業するケースは今や店舗ビジネスではスタンダードになりつつあります。その最大の理由は、やはり既に内外装や設備が出来上がっているので、出店コストを大幅に抑えることができることです。飲食店の場合、お店を造る費用は内外装に各種設備、厨房機器などを入れると全体コストの7割近くになります。この7割のコストを大幅に削減できるのですから、出店の際のメリットとしては、やはり最も大きなポイントであることは、言うまでもありません。

しかし、居抜きでの開業メリットは表面的なコスト面だけではありません

では、どんなメリットがあるのかと言うと、それは「情報」です。

この居抜き物件は、既にその地域で商売をしていたわけです。この実際にやっていたということ自体、大きな情報源であるということです。

残念ながら居抜き物件として出てくる店の殆どは、失敗店であることは間違いありません。しかし、その失敗したポイントは店によって様々ですから、失敗理由以外の部分ではうまく行っていたということもあるわけです。ですから、失敗店だからと言ってそこから聞こえてくる情報は全て無駄な情報であるとは言えないわけです。

もし、居抜きで売りに出ている店がまだ営業中だった場合、これはとてもチャンスです。

内見にうかがう際には殆どの場合、現経営者の方かお店の従業員の方(殆どの場合、店長さん)などが立ち合いされます。お店の中を見ると言っても、そんなに時間が掛かるものではありませんから、一回り様子を確認しながら、お店の方にいろいろと質問することができるチャンスがあるわけです。この時にもちろん、設備に関することや、そのコンディションや不具合の有無などを確認するのですが、それ以外にも、どんなお客様がこのお店では多いのかとか、お客様が最も多い曜日や時間帯、お店の前を歩いている人はどんな人が多いのか、時間帯別にどんな感じなのかなど、一般的なお話であれば殆ど教えて頂けるはずです。

この情報から、自分がやろうとしているお店だったらどうかということが想像できたり、飲食店ならばメニューを考える上での参考にもなります。また、お店の営業時間や定休日などを考える上でも参考になります。

もしかしたら前店主は、お客様がなかなか来て頂けないためにずっと店の前の人の行き交う様子を眺めていたかもしれません。忙しい店の店主よりもお店の前を歩く人のことについて詳しくなっているかもしれません。その時間たるや店を売りに出すまで何十日も見続けていたでしょうから、下手なマーケティング業者よりも正確な情報を得ることが出来るかもしれません。

また、お店を売りに出している人は、これ以上は店に対して投資はできないからこそ売りに出すわけです。ですから、「出来たらこうしたかった」ということがあるかもしれません。それが2つ目の大切な情報です。

それは、店のこの部分の使い勝手や具合が良くなかったから直したかったとか、お客様が心地よくなさそうだったからこの部分を直したかったなんてこともあったと思います。他にも、深夜時間帯に意外に人通りがあるので店をできれば開けたかったとか、そんな話の中には、居抜き店舗を購入後に絶対にやっておいた方がよい重要な情報が隠れている場合があるのです。

居抜きを買うということは、できるだけ出費を抑えたいわけですから、効率的に店造りを直すことができれば更なるコストセーブになります。商売をその場所でやっていた先輩ですから、大切なアドバイスを貰える可能性が高いわけです。

私たちのような建築関係者でも気付かないようなことがあるかもしれません。それは、長い時間実際にその場所に居ないと解らないこともあります。表面ではみえないことでも、雨や水が漏れているような音がしていたとか、雨風が吹き込んでくるとか、地震のときに必要以上に建物が揺れたとか、とにかく長時間、その場に居ないと解らないこともあります。実際にお店を始めてから気付くのと、お店を始める前に問題を突き止めておくのでは、結構な差が出てきたりします。また、後で痛い思いをしなくて済むかもしれません。

このように、閉店前のお店の方からお話を聞けるということは、とても重要な情報を得ることが出来るということです。この情報はお金に換え難いものがありますし、この情報自体がコストセーブにつながる場合もあります。勿論、全てを鵜呑みにして良いとは言えない部分もありますが、そこは最終的に検証をしっかりするべきです。しかし、それでも情報が何も無いよりもあった方が確認もしやすいわけです。情報があるということは、時間も手間もそれだけ省くことが出来るということもでもあるということです。

当社では、居抜き物件のご紹介や取引のお手伝いなども行っています。
また、未公開物件情報などもございますので、お気軽にお問合せください。