出店は立地だけでなくマーケットで判断する
新規出店のための立地評価をシステム化して取り組み始めたのは90年代に大躍進したコンビニエンスストアーの某数字の名前のチェーンです。それまでにも、コンビニ以外の大手外食系チェーンでも立地評価システムというものはありましたが、小売店のような小さなお店でこの考え方を導入したのはこれが初めてでした。これに見習って、その他全国のコンビニチェーンが似たような立地評価システムを開発し出店判断をしてきました。
私は某機電メーカーを辞め、当時給料がとても高かった某コンビニチェーンの店舗開発の仕事を暫くの間やっていました。そのコンビニチェーンでも独自の立地評価システムがあり、毎日のようにフィールドに出て物件の立地を確認したり、歩行者の数や自動車の通行量など、営業車の中でアンパン片手にカウンターでカチカチとカウントしたり、街中を歩き回って地域の人々の様子を見たり、人の流れや周辺のお店の様子なども確認したりしていました。
以前のブログでも書いたように、立地は出店する上でとても重要で、立地が良ければ商売は必ず成功すると言われる程です。しかし、競争が激化してゆく中での出来事ですが、競合店が同じ地域(近所)に出店すると売上が半減するのです。そして、更に3店舗目の競合店が出ると、更に売り上げは下がり競合店が居なかった頃の1/3以下もに落ち込むのです。つまり、最初にその地域に出店した時には、その立地は独占状態だったのに、競合店が出店すると幾ら立地が良かったとしても売上が下がってしまうのです。
良かった筈の立地が後に悪くなることがある。つまり立地は絶対ではないのです。
そこで重要になってくるのがマーケットです。マーケットとは、日本語で市場と言う意味ですが、簡単に言えばこの店を使ってくれそうなお客様がどのくらい潜在的に居るかということです。この予測数が多ければ競合が出店してきて売上がたとえ半分になったとしても、お店が潰れるほどの心配はありません。しかし、マーケットが小さい、つまり潜在的なお客様の数が少なければ、魅力の弱い店の方が潰れてしまうということです。
ここで注視して頂きたいのは、潰れるのは「魅力の弱い店」ということです。
同じ店でも、新しければ良いかと言うと、決してそうとも限りません。その証拠に、後から出店した目新しいお店よりも老舗の方が強いということも沢山あります。私がコンビニで働いていた時も、ある他のチェーン店が後発で出店してくることがありました。しかし、絶対にあそこのチェーン店には負けないという競合店がありました。競合店は自分の勤めるチェーンよりも圧倒的に大きな会社だったのですが、実際に売上で負けることはありませんでした。
その頃から私は店造りがとても大切だと実感していました。「店造り」は単に内外装工事のことだけを指す言葉ではなく、お店の考え方や接客、オペレーションの品質、品揃えなど、そのマーケットで支持されるための全ての要素を指します。それをもっと解り易い言葉で言うと、来店されたお客様にとって便利で使い易く、解り易く、不愉快な気持ちにならない店ということです。
この、「便利」「使い易い」「解り易い」「不愉快な気持ちにさせない」ためには、マーケットをしっかり分析した「店造り」をする必要があるということです。
お客様がご来店されて(お店の敷地に入られて)から用件を済ませてご精算されて、そのお店(の敷地)を出て行くまでの間の全てにおいて「便利」で「使い易く」「解り易い」そして「不愉快な気持ちにさせない」ためのハードとソフトが一体化した店舗こそが理想的な店造りと言えるわけです。
つまり、出店する際には立地判断だけでなく、その場所を中心としたマーケット調査を行い、そのマーケットデータを見ながら店造りを考えることが重要なのです。
当社では、立地判断や現地調査などの物件に対する評価調査業務以外にも、マーケット調査レポートの作成も行っています。また、そのデータを用いてご依頼者様と共にどのような店造りが必要であるかの検討を行い、ご出店のアドバイスをする「出店アドバイザリー業務」も行っています。工事の有無に関わらず、ご依頼者様にとっての店舗開発マネージャーとしてもご活用ください。