居抜き物件における造作譲渡価格の謎
居抜き物件には、造作譲渡価格が設定されているものから、造作譲渡無料という物件までその価格は様々です。実際に物件を見に行ってみると、見た目にとても綺麗で今すぐにでも店を始められそうな物件が造作譲渡無料だったり、老朽化が激しくて全部壊してやり直さないと店が始められそうにない物件に数百万円の造作譲渡価格が付いている場合もあります。
冒頭の文章から薄々感じられたかと思いますが、造作譲渡には値付けの基準があるようで実は無いのです。普通に考えれば値段は物の価値に対して付けられるものですから、「造作譲渡」と言っている以上、その値段は店の内外装や看板、設備機器や物品などを細かく査定して値付けされている筈です。しかし、実態はそういうわけではありません。
そもそも居抜き物件と言っても、いくつかのタイプがあります。
建物から店舗まで全て店のオーナーの持ち物で、お店を閉めるのでそこを貸し出そうというものや、建物は借りていて店舗の内外装だけ店のオーナーの持ち物だというもの、建物は借りていて、内外装をそのまま使ってくれる人に貸し出す転貸と言う形のものなど、「居抜き」と言ってもいろいろあるわけです。
さて、それでは次に居抜きとして物件が出てくる理由ですが、その殆どは店を閉めるので次の人にできれば使ってもらいたいという理由です。つまり、店を閉めるので、これ以上の出費はしたくないということなのです。
店を壊して何もない状態にするだけでも、解体費や産廃処分費などの費用が掛かります。特に賃貸物件のお店の場合には、原状回復義務がありますから店を壊す(原状回復)費用が掛からないだけでもそのメリットは非常に大きいわけです。
それなら、譲渡費用が全て無料にしてくれても良さそうに思いますが、話はそう簡単ではないのです。
造作譲渡価格には、店を閉める理由に大きく起因するものがある。
例えば、その場所で何十年も繁盛店として商売を続けてきたけれど、高齢で後継者もいないので引退を機に店を閉めるというケースです。これが冒頭の「老朽化が激しくて全部壊してやり直さないと店が始められそうにない物件…」と言う場合が多いです。
このケースだと、何十年もその場所で繁盛店として商売をやり続けてきたということは、その場所に価値(プレミアム)があると考えることが出来るわけです。造作自体には全く価値が無くても、その店はずっと繁盛店であったということがプレミアムになっているということです。そういう場所は、前の店と同じ業種業態の店を出したい人にとっては、ある意味で成功が約束されているようなものですからプレミアムを支払っても出店したい場所ということなのです。
ちょっと話は横道にそれますが、欧米では店舗物件に営業権の売買を認めていることがあり、店のレント費用(家主に支払う家賃)以外に、以前の店主が営業権を売るという考え方があります。日本で言うと起業して上場時に会社を売って自身はその事業から身を引くようなもので、繁盛店をやってきたこと自体が価値として売買できるという考え方です。この場合にも、店ごと売り渡すという考え方ですから、日本の造作譲渡とよく似ていますが、欧米では割と一般的な取引形態となっています。欧米では、店舗だけでなく住居用の賃貸でも家具付きなんて賃貸物件が非常に多く、住居でも店舗でも居抜きで次の人がそれを利用して使うということが一般的なのです。日本のように原状回復義務がある物件の方が少なかったりします。そういった意味では、日本も居抜き物件が増えたということは、欧米なみの「利用できるものは再利用する」というエコな考え方に近づいて来たと言えますね。
話を元に戻しますが、では造作譲渡金額が無料では無いけれど、ちょっとだけ金額が付いている物件は、どういう理由なのでしょうか。この場合には理由は様々ですが、共通して言えることは「これ以上、出費したくない」という理由が殆どです。誰しもやめる店にお金を使いたくないですから、できれば買い取って欲しい(できればちょっとばかりの収入も欲しい)ということです。
最近では、様々なリサイクル買取業者によって、お店から搬出できるもので売れそうなの物は買い取られてゆきます。また、買取金額が付かなくても持って行ってくれる業者もありますから、店をやめる人にとっては処分費が掛からなくて済むだけでもメリットです。そして最後に残るのが、物件に造り付けた内外装(造作)と言うことになるわけです。
店を出したいという人は沢山います。そうするとそこには競争原理が働くわけですから、より高く買い取ってくれる人に、その場所を使える優先権を与えるというわけです。
しかし、これにも大きな落とし穴があります。
落とし穴とは、建物の所有者(家主)の審査です。
幾ら造作を高く買うと申し出て売主が了解してくれても、家主が物件を造作の買主に貸すと決めてくれなければ出店はできません。つまり、店を出したい人にとっては、この人に造作を譲渡するという前店主との交渉の後に、家主からも物件を貸すという了解をとって初めて物件を確保することができるというわけです。
これは、造作の所有者と建物所有者が異なる場合の話ですが、殆どの居抜き物件はこれに該当します。
「造作譲渡価格の謎」の答えはプレミアムです。
非常に良い場所(立地)だったり、長い期間繁盛店が営業していた物件ほど、プレミアムとして造作譲渡価格が高いという傾向にあります。つまり、誰が見てもその場所で店を出したいというような場所はプレミアム価格が付いてしまうということです。
つまり、造作譲渡価格は造作自体の物の価値ではなく、その場所の価値が割と大きく影響しているケースが多いというわけです。
居抜き物件を利用して出店する場合、場所が良くても、その造作譲渡の価格に見合った売上、つまり投資回収が可能かということも検討する必要があります。そういった際にも、当社は造作等の再利用の可否や低コストでの改装プランの策定、更にマーケット調査などの全方向でのアドバイスを行うことができます。何処の会社が扱っている物件でも問題ありません。あなたの店舗開発ブレーンとして、お気軽にご相談ください。
※当社でも未公開物件などをご紹介できる場合もございますので、お問合せください。